【SEKIRO】フロムが追求した先にたどり着いた「ゲーム性」の道【レビュー】

今更ですが…

2019年3月22日にフロムソフトウェアより(海外ではActivisionが販売)発売された、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICEの一週目を先日クリアした。
…いや、クリアしたのは去年の8月頃であり、レビューもそのうち書こうとしていたのだが「まだ倒していないボスもいるし、別ルートをクリアしてからにしよう」なんて思っていたらこんな日にちになってしまったので、残ったボスは後回しにして感触が消えないうちにレビューを書いておきたい。

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洗練された難易度バランスと戦闘システム

 

今作は、フロムソフトウェアの代表作であるソウルシリーズに類似したソウルライクなアクションゲームだ。
しかし、今までソウルシリーズやブラッドボーンなどであったレベルアップによるキャラクターの育成、ステータス振り分けや、武器によってアクションや性能が変わるなどの成長要素が少ない(ボスのドロップアイテムでのステータス上昇や忍具といったサブガジェットはあるが。)。
そのため、勝てないと思った敵と遭遇したときにステータスや装備を強化してゴリ押しをするといった攻略法が出来なくなっている。
ではどうするのか?というと、プレイヤー自身のプレイスキルの上昇が求められているのだ。
何度も敗戦を繰り返しながらも徐々に徐々に攻略の糸口を辿り、突破法を見つけ出さなければいけない。
これが今作を難易度の高い鬼畜ゲーと言わしめる所以だろう。

最初にボスと戦闘をしたときに、相手の体力の3/1も削れずに敗れることなんてざらである。敵の隙なんて感じられない攻撃と、圧倒的な火力の前に一瞬で死を迎える。勝ち目がどこにあるのか疑問すら覚えることもあるだろう。
しかし、何度も挑戦を繰り返していくと、敵の行動パターンを把握して、自ずと攻撃を弾けるようになる。するとこちらが攻撃をするタイミングが見え始め、気づけば倒せる気がしなかった強敵と渡り合い、圧倒し、勝つ。
自分の成長が結果として如実に表れる。最高の高揚感を味わうことが出来るのだ。
これがこのゲームの醍醐味だろう。

今作はこのバランスが絶妙にできている。どのボスにも突破口があり、何度も死闘を繰り返すことで感覚を研ぎ澄ませていくのだ。

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これは煤まみれになってまっくろなせきろ

 

もう一つ、このゲームを評価する上で欠かせない点は、戦闘のシステムだ。
ソウルシリーズでは、相手の攻撃に合わせてパリィを行うことで大きな隙を作り、大ダメージを与えることが出来るのがお約束である。
今作も例に漏れずパリィに類する「弾き」というシステムがあり、これは他のシリーズに比べると成功しやすい。というのも、他のシリーズではガートボタンとは別にパリィ用のボタンを押して発生するため、タイミングを誤ることで確実にダメージを負ってしまう。

しかし、今作はタイミングを合わせてガードのボタンを押せばいいため、弾きが発生しなくてもガードに成る可能性が高いのでリスクが少ない。

それは今作において「弾き」を行うことは他の作品よりも重要なことだからだろう。

今作ではキャラクターには体力とは別に「体幹」というステータスが存在する。
これは、敵の攻撃に対して「弾き」などを行うことでゲージを削ることができる。
今作ではほとんどの敵が、体力を削りきるよりも体幹を削りきって倒す方が有効的だ。
つまり、敵を倒すために「弾き」を行うことは必須のテクニックになってくる。

そしてこの体幹ゲージというのは、戦闘中に間が開くことで徐々に回復してしまう。また、この回復は体力が少ない状態だと回復量も減少するため、有効的に体幹ゲージを削るにはまず体力をある程度削って体幹の回復量を減らし、相手の攻撃を躱して体幹を削っていくという過程になる。


また、弾き以外に相手の体幹を大きく削る手段として、相手の突き攻撃に対する「見切り」、下段攻撃に対する「踏みつけ」がある。
これらは敵が仕掛けてくるガード不能の攻撃に対する対抗手段であり、失敗をすれば大ダメージを受けてしまう。しかし、見返りも大きく、弾きよりも体幹を削ることが出来て、相手に隙を作り攻撃を与える事が可能だ。

 

上記の戦闘システムは「リスク」と「リターン」が分かりやすく設計されている。
弾きは攻撃を受ける「リスク」が控えめな代わり、体幹を削る「リターン」も少ない。
見切りは、失敗すれば大ダメージを受けるという「リスク」の代わりに、削れる体幹も大きい=「リターン」が大きい。

この「リスク」と「リターン」というのは様々なゲームにおける面白さと直結しており、このゲームの面白さには「リスク」と「リターン」の絶妙さがあったからだろう。


これらの芸術的なまでに練り込まれたゲームシステムが、今作をいままでのアクションゲームとの違いとなっている

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・フロム脳が刺激される世界観やストーリーとキャラクター


今作では今までのソウルシリーズと異なり、日本の戦国時代が舞台とされている。
これまでに無かった舞台ではあるが、重苦しい戦場の空気感、美しく幻想的な自然の描写、おぞましく恐怖感を煽る空間など、世界観の設定や雰囲気の描写力は流石の一言。

今までのフロムが作ってきたソウルシリーズは、主人公はキャラメイクによって自分で作ることができた。
しかし、今作では主人公はあらかじめ用意されている隻狼という忍。最初は感情が殺されたただの寡黙な忍にも見えるが、ストーリーを進めるうちに彼の人間性も見え隠れし、最初の印象とは異なるキャラクターとして構成されていく。
また隻狼が仕えている御子様はもちろん、敵として現れる葦名弦一郎、サブキャラクターの死なずの半兵衛、商人の穴山など、魅力的な登場人物が多数登場する。
ストーリーが進む中で各キャラクターがどのように活躍をしていくのかを追うのもまた楽しみの一つとなる。

 


2019年のゲームオブザイヤーにも輝いた今作、いまから始めても遅くはない。
PS4以外にもPC版やXboxOne版もあるのでお好みのハードでプレイするといいだろう。
もし、快適に遊べるスペックのPCがあるならば、ボス戦だけを遊べるモードなどをMODで追加できるPC版をおすすめしたい。

出来もよく素晴らしい作品なので興味がある方は必ずプレイしてほしい。

Steamページ:https://store.steampowered.com/app/814380/Sekiro_Shadows_Die_Twice/