e-Sportsはオリンピック競技になりえるのか?
「e-Sports」という言葉を聞いたことがある人は、だいぶ増えたのではないだろうか。
というのも、2024年に行われるパリオリンピックで種目として正式に採用されるのではという話題が出てきているからだ。
「ゲームがオリンピック競技に」という10年前では考えられないような動きに、普段はあまり取り上げられないゲームの話題も、ワイドショーの話題などで取り上げられるようになってきた。
一ゲーマーとしてはゲーム産業が活発化して、話題に上がるのは嬉しいことではある。しかし、e-Sportsをオリンピックの競技種目に採用するにはいくつか問題があるだろう。
今回はその問題点について洗い出し、個人的な意見を書いていきたい。
e-Sportsとは?
まずは基本的なところから。
e-Sportsというのは、ゲームを用いた競技のことを指す。
ただ、ゲーム全部がe-Sportsではなく下記の条件にあてはまるものがそう呼ばれる。
・対人対戦
・運に左右される要素が少なく、プレイヤーの技量によって勝敗が決まるもの
・対戦者同士が平等で公平性のあるゲーム性
ただし必ずしも上記の通りではない(Heathstoneには運要素も強いがe-Sportsと呼ばれる)
代表的なe-Sportsタイトルとしては
・League of Legends
・Dota2
・Counter-Strike:Global Offensive
・Hearthstone
・Tom Clancy's Rainbow Six Siege
・Rocket League
・StarCraft2
…etc
といったように非常に多彩なタイトルがあげられる。更にはここに挙げられているタイトル以外のe-Sportsタイトルはある。
中には複数タイトルで活躍するプレイヤーもいるが、基本的にはタイトルごとにプレイヤーは分かれている。
e-Sportsはスポーツなのか?
e-Sportsの議論の中でまず出てくるのがe-Sportsをスポーツとして取り扱っていいのかというところだろう。
これに私は声を大にして
e-Sportsはスポーツである
と言わせてもらいたい。
「運動をしていないのにスポーツではない」という意見を言う方もいる。しかし「スポーツ」には将棋やチェスなどのマインドスポーツや、F1などのモータースポーツなどもあり、ルールに則り勝敗を競う競技という意味合いも強い。
競技性という部分で言えばe-Sportsはとても高く、また見栄えもあるだろう。
また、オリンピック競技にある「射撃」も運動性が高いとは言えないが立派なスポーツだ。それを加味すればe-Sportsも十分スポーツとして認められるのではないだろうか。
e-Sportsはオリンピックに選ばれるのか
では、e-Sportsがスポーツであるならば、オリンピック競技として選ばれるのかというのが次の疑問である。
個人的な意見ではあるが、e-Sportsはオリンピック競技にふさわしいのかと言われると素直に「YES」と答えられない。その理由をいくつか挙げていく。
・ルールやプラットフォームの変更が多い
まず一つ目としてあげるのがルールの変更やプラットフォームの変更が多いこと。
ルールの変更というのは、ほかの競技でも割と行われることである。しかし、ゲームの場合は他のスポーツに比べて、新しい要素が増えたり、バランスの調整などで全く別なものに変わるというのが珍しくない。それが4年に1度のオリンピックとなれば、前回の大会で見たものと全く別なものになるだろう。
また、プラットフォームの変更というのは何か。
ゲームはあくまでも商業用の製品であり、定期的に新作が出される。またゲーム機本体も6~8年周期で入れ替わっているため、全く変わらずにいるというのはあまり好ましくない。
普遍的な競技が多いオリンピックの中で、これだけ変更内容の多いe-Sportsが競技として認められるのか。
・種目の乱立
冒頭のe-Sportsの説明の中でも取り上げたが、e-Sportsには種目が非常に多種に分かれている。
また種目ごとにルールなども大幅に変わるのも大きな要素である。これだけ多く分かれている中どの種目を競技として取り上げるのか。
ジャンルごとに分けるのもいいだろう。しかし同じFPSでもCoDとCS:GOで全然違ってくる。
また、これは後述する部分にもかかわってくるのだが、種目として選ぶかどうかで、その作品に与える影響がだいぶ変わってくる。プロゲーマー達はこぞって選ばれたタイトルに移行するだろうし、そのファンたちも移行する可能性が高い。
これらを影響性を考えたうえで、果たして種目の選出が可能なのか。
・表現的な問題
これはすべてのタイトルに該当するものではないが、ゲームには暴力的な表現は少なからずあるものが多い。
銃器を扱うタイトルも多いし、格闘ゲームやLoLなども攻撃を行っているところは暴力表現にあてはまるだろ。
ボクシングなどの競技もあるため、一概にダメというわけではないだろうが、世界中の全年齢に向けて放送も行われるため、銃器を使っていいのかなどの問題はあるだろう。
・利権的な部分
e-Sportsの他のスポーツと大きく違う点として、種目を作っているのが1つの企業であるということだ。
ほかの競技では、ルールという概念的なものに則ることで競技を行うことができるが、e-Sportsはソフトを購入しないといけない。
道具を使用する競技は多いが、スポーツ道具のメーカーは複数あり、一つのメーカーが独占することは少ない。
しかし、e-Sportsの場合は一つのメーカーのみから発売されているソフトを購入しないといけないため、種目として選ばれたメーカーは独占的な利益が見込めるだろう。
そこで上記の「種目の乱立」でも述べた、どのタイトルを種目として選ぶのか。
オリンピックという公平性が求められる場で、独占的な利益を見込める結果が出るのは認められるのか。(実際にオリンピックの運営に公平性があるのか、クリーンであるのかはまた別だが)
どのメーカーもこぞって種目に選ばれることを狙うだろう。
大きな問題はこのあたりだろう。
以上の問題は、悪いことというわけではない。しかし、オリンピックという大会にふさわしいのかと問われれば、ついて回る問題だろう。
まとめ
以上の問題を考えると、「オリンピック」という大会にふさわしいのかと問われると、言葉が濁ってしまうというのが私の考えだ。
もちろん一ゲーマーとしては。オリンピックという場でゲームが取り上げられるのは夢のようなことだし、実現してほしいとは思う。が、無理して実現するべきことでもないのかなぁとも思ったり。
ただ、今後のe-Sportsのことを考えると、オリンピック競技になるかどうかで企業スポンサーのつき方も変わるだろうし、難しいところ。
なので、私の考え方としては、e-Sportsの世界大会としてWBCやワールドカップのような世界的な大会を、複数タイトルまとめて新しい大きなイベントを開催するというのは。
ただそれをどこが主催するのかなどを考えるとまた難しいのかな…
とはいえ、パリオリンピックの主催者はe-Sportsの競技種目化に前向きである発言をしていたため、選ばれる可能性はあるだろう。
もし選ばれるのだとしたら、全力で応援したい。
そして以上の考察は、ただの一ファンが適当に考えて話しているだけなので、そこまであてにしないでほしい。