【レビュー】Welcome to Tarkov【Escape from Tarkov】

はじめに

Escape From Tarkov(以下EFTまたはタルコフ)というゲームをご存知だろうか?

先日「配信技研」より発表された2021年12月のゲームカテゴリのライブ配信より試聴時間順位において、Apex Legendsに次いで4位となったりと国内でも注目を集めるゲームタイトルの一つになっている。

このゲームのサムネイルなどでよく使われる言葉として、「リアル系FPS」や「硬派FPS」などがあるがそれはこのゲームが持っている一つの側面に過ぎず、本当の魅力は他にもたくさんある。

今回はこの魅力に溢れる唯一無二のゲームであるタルコフについて紹介していきたい。

 

このゲームはBattlestate Gamesというロシアのゲーム会社が開発をしている。ゲームに関する情報には比較的聡い自信がある筆者も、この会社がタルコフを作っている会社という情報以外よく知らない割と謎の多いゲーム企業だ。

2016年の12月にクローズドαとしてサービスを開始しており、2017年7月から現在に至るまでベータ版としてサービスを継続している。

ここで少し驚かれた人もいるかもしれないが、本作はまだベータ版であり今後もマップや武器などの追加が予定されている。

開発者が今後の追加要素の予定についてTwitchの公式配信などで語ることがあるのだが、全ての要素の追加が完了するには正直あと4、5年は少なくてもかかるのでは…と思われる。

 

今作のゲームの舞台は欧州とロシアが共同で作り上げたNorvinsk州という架空の経済特区内にある一大都市Tarkov。

この経済特区内の特権をフルに悪用した欧州側の超巨大企業であるTerraGroupのスキャンダルが発覚し、ロシア政府からの密命でTerraGroupについて調査をしていた「BEAR」と、調査を妨害するためにTerraGroupに雇われた「USEC」という二つのPMC(民間軍事企業)による紛争に発展する。その結果Norvinsk地域の境界は封鎖され閉じ込められてしまう。

物資の不足などタルコフ市内では治安が悪化していき一部の住民が「Scav」というギャング集団と化していき各地で徒党を組んでいく。

この無法地帯となったタルコフの中で三勢力の争いに巻き込まれながら、生き延びて脱出を目指す。…というのが今作の大まかな設定。

 

このゲームの面白さを語るにあたってさまざまな要素があるので一つずつ語っていきたい。

 

1.目標設定の緻密さ

このゲームの大きな目標はプレイヤーキャラPMCの「レベル」を上げることだろう。

レベルを上げることでNPCから購入できるアイテムの幅が増えていき、戦闘に有利になる強い弾や銃、防具などを手に入れやすくなったり、ハイドアウトと呼ばれる秘密基地の施設のレベルを上げることが出来るようになりアイテム生成やステータスの向上などの恩恵を受けることができる。

このレベルを上げるという大きな目標に対し、中間の目標としてレベルを上げるための経験値を得ることができる「タスク」と呼ばれるミッションがある。

タスクというのは「レイドの中で〇〇を拾ってこい」「マップの〇〇にマーカーを設置しろ」「敵を〇体倒せ」などのミッションをクリアすることで報酬や経験値を得ることができる。

そしてそのレイドの中でアイテムを拾ってお金を増やすというのが小目標であり、このゲームの基本となる目標である。

この「レベルを上げる」「タスクをクリアする」「アイテムを拾う」という大中小の目標のバランスが絶妙なバランスで成り立っているのだ。

 

レベルを上げるためにタスクをこなしていくのだが、タスクを達成してやった!と喜ぶとレベルも徐々に上がっていき新しいタスクが出てくる。

タスクをこなしていく中でついでに漁ったものからレアで高級なアイテムを拾ったり、タスクで納品するためのアイテムを拾ったり…

この「達成感」を得られるタイミングと「次の目標」が見えてくるタイミングというのが重なるようにできているので、目標の達成と同時に次の目標に向けてゲームを続けてしまう。

大中小の目標をコツコツ達成する事で自身のキャラクターの成長にもつながり、達成感も得られ、次の目標も見えてくる。このサイクルが続く事がこのゲームが持つ魅力であり中毒性を高くする要因だろう。

 

2.ゴミを漁るだけでも楽しい?

アイテムを漁るという事は小さな目標であり、ゲームを遊ぶ上での根幹部分である「お金」を稼ぐ手段でもある。大きな稼ぎではなくても小さな稼ぎを積み重ねる事でお金を貯める事ができる。

一個で何十万もするような高額アイテムをゲットできる事は稀であり、基本は一個1万ルーブル程度のアイテムをバックにパンパンに詰めるのが精一杯だろう。

しかし少額のアイテムでも数が揃えばそこそこな稼ぎになる。バックやリグにアイテムをパンパンに詰めて帰れば3、40万程度の稼ぎにはなるだろう。塵も積もれば山となる。ゴミも集めれば金となるのだ。

なので1個1万ほどの低レアのアイテムでも美味しく感じられる。ゴミ漁りが楽しい所以だ。

 

この漁る事が楽しいと感じるのは他のゲームではあまりない事だろう。バトロワなんかで漁りだけして雑魚死したらただ退屈な時間が過ぎただけであるが、タルコフの場合は漁るだけ漁って生還するだけでも楽しいのだ。

この感覚をタルコフ以外で経験する例はあまり思い浮かばない。ハクスラ系でレアアイテムをゲット出来て嬉しい感覚も近いかもしれないが、低レアだけでも楽しいと感じるのは稀だろう。

タルコフというゲームの唯一無二な部分だと言える。

 

3.「リスクとリターン」

「ゲームの面白さ」を語る上でこのリスクとリターンの話を必ずしている。「リスク」に対して「リターン」が得られることで達成感を得て面白い!と感じるのがゲームの面白さの根幹となる部分であるが、このゲームはリスクだらけだ。

まずマップを歩くだけで接敵するリスクを負う。どこに敵がいるのかわからない戦場の中でアイテムを漁りに行ったり、タスクの目的地に向かわなければならない。いつどこで敵が見ているのかわからないリスクが常にある中で行動するのはかなりの緊張感だ。

このゲームでの最大のリスクは「死ぬとほぼ全ての装備とアイテムをロスト」する事だろう。

一部例外はあるが、装備している武器や防具、漁ってきたアイテムなどは死んでしまうとその場でロストする。レイドで得られたスキルの上昇や経験値などもあるため全く0になるわけではないが、喪失感はかなりのものだろう。

これらのリスクに対してリターンとなるのは前述した目標の達成だろう。目的の場所まで行く事でタスクを達成したりアイテムを集める事ができる。

敵との戦闘は死に直結するリスクであるが、倒す事ができれば相手の装備や漁ってきたアイテムを得られる大きなチャンスでもある。

死闘を繰り広げた相手から装備を収奪している瞬間はアドレナリンやらドーパミンがドバドバだ。心臓の鼓動が感じられるほどの緊張感から得られる達成感は対人ゲームの醍醐味だろう。

 

またこのゲームではリスクの調整ができる。装備のロストが最大のリスクであるなら、失っても痛手の少ない装備、安価な装備で行く事で死のリスクは軽減されるだろう。

しかし安価な装備ということは戦闘になった時に負ける可能性も大きくなる。激戦区を避けるなどして強力なPMCとの戦闘を避ける立ち回りをすれば安価な装備でも手堅くリターンは得られるだろうが大きなリターンを得る見込みも少なくなる。

逆にガチガチの強い装備で行く事で戦闘に勝てる可能性も増え、得られるリターンの見込みも大きくなるが、もちろん失うリスクも大きくなるだろう。

このリスクとリターンを調整できるのも醍醐味の一つだろう。

 

 

4.FPSの皮を被ったRPG?複数の成長要素

このゲームをリアル系のFPSであると思っている人は多いだろう。もちろん間違いではないし実際にプレイする部分はFPS要素が強い。しかし私はこのゲームをFPS要素の強いRPGだとも思っている。

まずこのゲームにはレベルの概念が存在しており、レベルに応じて揃えることのできる装備が変わってくる。このゲームでは銃の違いだけでなく弾薬の違いも存在して、弾薬によって倒せる相手の装備も変わってくる。

逆に言うと強い防具を着ていれば、弱い弾を使う相手から撃たれてもダメージをほぼ負わないということもたまに起きる。つまりレベルが低くて良い弾薬良い装備を揃えられないPMCが、レベルが高くて強い弾薬強い装備を揃えてるPMCを倒すのはかなりの困難だ。

また、スキルの要素も存在し、たくさんプレイをしてスキルの育っているプレイヤーは、スタミナも多く足も速いため長距離を素早く移動する事ができる。つまり他のプレイヤーより早く、漁りが美味しいスポットまで移動する事ができる。

これらの成長要素は紛れもなくFPSではなくRPGの要素だろう。レベルを上げて物理で殴るではないがこのタルコフではできるのだ。

もちろん1レベルでも40レベルのPMCに対してヘッドショットをすればワンパンで倒すことはできるのでFPSの要素も強いのも事実である。しかし、それを防ぐためにヘッドショットを守る防具も存在するため、やはりこのゲームにおいて強い装備を揃えるためのレベルを上げると言うのは非常に重要な要素になる。

 

5.複雑すぎるシステム

今までタルコフのことを褒めちぎっていたわけだが、少し問題点も上げておく。

こういった硬派なゲームにありがちなことではあるが、覚えることや学ぶべきことが多すぎて初心者が1から始めるには敷居が高いことだろう。

まず始めてからはアイテムの取捨選択を迫られる場面が沢山あるが、どのアイテムが必要なのか不必要なのかの判断はまずできないだろう。攻略wikiなどを調べて判断するのが一番だが、アイテムの量が膨大すぎていちいち調べていたらゲームが進まないし、レイド中には調べている余裕もない。

また、レイドに出てからもマップを把握しないと自分がどこにいるのかも分からない。現在地を表示するマップなんて存在しないので別画面でマップを出すなども必要になってくるがそれでも迷う。

また、前述したとおりこのゲームには同じ銃でも弾薬の違いが存在するのだが、弾薬によって「貫通力」だの「ダメージ」「アーマーダメージ」「破砕率」など複数のパラメータが存在しており、どの弾薬が強いのか、なぜ強いのかなどを覚えていく必要もある。

しかもこれらのパラメータはゲーム内に表記されてないことも多いのでwikiなどで調べるしかない。

さらにさらに、状態異常になった時の対処方法や、複雑な操作方法など始めたての初心者が混乱する要素がたくさんある。

一緒に遊びながら教えてくれるフレンドがいるなら一番だが、そうでない場合はひたすらwikiと睨めっこしながら遊ぶ必要があるだろう。

その困難を乗り越えてでも遊んで欲しいのがタルコフでもあるが、ライトユーザーにはおすすめしにくいゲームではある。

 

6.まさかのデータリセット

このゲームには大体半年に一度「ワイプ」と呼ばれる大型アップデートと一緒にデータリセットが行われる。今まで育てたキャラクターのレベルや、達成してきたタスクの数々がリセットされて1からやり直さなくてはいけない。

これを聞くとふざけるなと思う人もいるかもしれないが、このゲームの魅力は目標の達成と成長なので、このワイプがあることで序盤の成長していく楽しさをやり直す事ができる。

これに関してはやってみないと味わえない感覚だと思うが、遊べば遊ぶほどワイプに関して肯定的になれると思う。というのも、ワイプから時間が経てば経つほど周りのプレイヤーも成長していくため、どんどん装備も強くなっていく。最終的には成長要素も詰まっていくため達成感を得るのも少なくなって行ってしまう。

そのため、ワイプによってリセットが入るというのはプレイヤーにとっては割と肯定的に受け入れられているし、ワイプ直後の賑わいや、新米プレイヤーたちで溢れている環境はとても楽しい。プレイヤー全員が装備が弱いので誰にでも倒せるチャンスがある。

このゲームは最初に述べたとおりいまだにベータ版であるので、アップデートによる拡張が続いているが、製品版として完成したのちもワイプは続いていくのではないかなぁと思われる。

私はまだ38レベルなのでまだまだやらないといけないこともたくさんあるが、次のワイプが楽しみになりつつある。ストリートオブタルコフまだかなぁ…

 

総評

タルコフというゲームをまとめると「絶妙なバランスに設定された目標とそれに適した成長要素によって、他のゲームでは味わうことのできない達成感を得られる唯一無二のゲーム」であると私は思っている。前述のとおりアイテムを漁っているだけで楽しいと思えるゲームは他に思い浮かばない。

 

ワイプの直後に始めるのが時期としては一番いいかもしれないが、気になったタイミングで始めるのが一番いいだろう。最初は苦戦するかもしれないが、身につけた経験と知識はワイプのリセットがあっても消えることはないので他のプレイヤーと一番差がつく部分でもある。

強いていうならセールの時に買って始めるのがお得でいいかもしれない。エディションが色々あるが、おすすめは「EDGE  OF DARKNESS」だろう、間違いない。と言いつつ初めにスタンダードを買ってからでも差額分を払えばアップグレードも可能なので、自分がタルコフにあってるかが不安な場合はスタンダードから入るのもいいだろう。すぐにアップグレードしたくなるとは思うが。

 

来るもの拒まず、去る者逃さず。最初の敷居は少し高いかもしれないがぜひ、ロシアの沼に一緒に浸かって欲しい。